松山地方裁判所 昭和27年(行)2号 判決
原告 水口順市
被告 郡中町議会
一、主 文
本件訴を却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
二、事 実
原告は昭和二十六年十二月二十六日及び昭和二十七年一月十二日招集された郡中町議会のなした議決は無効とする、訴訟費用は被告の負担とする。との判決を求め、その請求原因として、原告は伊予郡郡中町長であるが昭和二十六年十二月二十六日郡中町議会は招集開会されたが、同日の議決によつて休会に入り、翌二十七年一月十二日続行議会が再開せられ、同日の議会で町長である原告不信任の議決をなした。然しながら、現行郡中町議会会議規則によれば、会期は毎会期の初めに議長が各常任委員会の委員長の意見を聴き、議会の議決を経て定めることになつているに拘らず、昭和二十六年十二月二十六日の同議会に於いては、会期を定めなかつたから、此の点で会議規則に違反しており、会期を定めなかつた以上会期は一日限りであるから、休会して後日再開続行するということは出来ない。従つて会期は右一日限りで終了したにも拘らず其の後十七日を経過して後、不信任の議決をなしたものであるから該議決は無効である。仮りに会期を延長したとしても、旧会議規則によれば、会期は三日をこえることは出来ないことになつており、この規則は廃止されたけれども、事実上は旧規則によつて議会を運営していたのであるから、この慣習に反して、十七日を経過した後続行議会を再開して本件議決をなしたものであり、又延長した場合には、会議規則第七条第五条によりその旨を町長に通知しなければならないにも拘らず町長である原告に通知していないから、この点においても会議規則に違反していると述べ、被告の本案の答弁に対し、昭和二十六年十二月二十六日全議員一致の議決で休会に入り、再開の日時は議長に一任したことは認めると述べ、更に原告は右議決は当初から無効であると考えたが訴訟と議会解散とは別個に考えるべきものと思い前記不信任議決に対し昭和二十七年一月二十一日議会を解散した。而して、解散後成立した新議会が消滅した前議会の瑕疵を承継しているから新議会を被告として本訴を提起したと附陳した。(立証省略)
被告訴訟代理人は、本案前の抗弁として、主文第一項同旨の判決を求め、その理由として(一)本件不信任議決が無効である点は争うものであるが、仮りに、議決に違法があつたとしても、無効の程度の瑕疵ではないから原告が右議決に基いて解散を命じた以上、その時に違法の瑕疵は治癒されたものである。(二)原告は議会を解散したのであるから、解散して消滅した議会を被告として訴を提起することは出来ない。(三)原告は地方自治法第百七十六条第四項に定める再議に付する手続を経ずして、直ちに本訴を提起したものであるから本訴は不適法である。従つて何れの理由によるも本件訴は却下せらるべきであると述べ、本案に関しては、請求棄却の判決を求め、答弁として、原告主張事実中原告が伊予郡郡中町長であること、昭和二十六年十二月二十六日議会が招集開会せられ、同日の議決によつて休会に入り、昭和二十七年一月十二日続行議会が再開せられ、同日の議会で町長である原告不信任の議決をなしたことは認める。然しながら、昭和二十六年十二月二十六日の議会は原告が招集し、当日の議案が重要であるので、更に検討を加えるため当日全議員一致の議決で休会に入り、再開の日時は議長に一任することになつたので昭和二十七年一月十二日続行議会が再開せられ、同日の議会で町長である原告不信任の議決がなされたのであるから右議決には何等違法の点はないと述べた。(立証省略)
三、理 由
被告の本案前の抗弁中先づ(三)の点について考えるのに、被告は、原告は本件不信任議決に対し、議会の再議に付することなく直ちに訴を提起したものであると主張し、これに対し、原告は明らかに争わず且、弁論の全趣旨によつても争つたものと認めることが出来ないので右被告主張事実を自白したものと看做すべきところ、本件訴は原告が町長として、議会のなした議決が法令、会議規則に違反すると考え、議会を被告として、該議決の効力を争うため提起されたものであることは、原告の主張事実自体から明らかである。而して、町長が議決が法令或は会議規則に違反すると認めたときは、理由を示してこれを再議に付することを要し、議会のなした再議決がなお法令、会議規則に違反すると認めた場合に初めて議会を被告として出訴することが出来るものであることは地方自治法第百七十六条第四項第五項によつて明らかだから、前記の如く原告が、再議に付する手続を経ることなく直ちに本訴を提起したものであることは争ないから、本訴は同法に違反する不適法な訴といわねばならない。
仍て他の争点についての判断は省略し、本訴を却下することゝし、訴訟費用の負担については民事訴訟法第八十九条、第九十五条を適用して主文の通り判決する。
(裁判官 加藤謙二 橘盛行 荻田健治郎)